相生の昔話

(12)オナラの引受け

 花嫁(はなよめ)が、披露(ひろう)の座敷(ざしき)へ出て、お辞儀(じぎ)した拍子(ひょうし)にプッと一つ
オナラを出した。

 脇(わき)についていた付女房(つきにょうぼう)が、すぐに我身(わがみ)に引受けて、花嫁にむかって、
「いとはん、えらい済(す)まんことしました。つい、私が粗相(そそう)しまして、どうぞ、こらえて、つかはれ」
と、あやまったので、花嫁の粗相も消え、座敷はそれで賑(にぎわ)った。

注1:「付女房」とは、「花嫁に付き添って世話する婦人」という意味です。
注2:「いとはん」とは、「お嬢さん」という意味です。主に関西で使われています。
注3:「えらい」とは、程度を示す表現で、「大変に」という意味です。
注4:「済まんこと」とは、「済まないこと」、つまり「申しわけないこと」という意味です。
注5:「粗相」とは、「不注意のためにおこした失敗」という意味です。
注6:「こらえて、つかはれ」とは、「我慢して下さい」という意味です
挿絵:立巳理恵
出展:『相生市史』第四巻