相生の昔話

(03)だんごのような瘤(こぶ)

あほな婿(むこ)が、嫁(よめ)の里へいった。嫁の家では、だんごをこしらえて出した。

「これはうまいもんじゃ、なんちうもんだす」

「だんごじゃ。娘は、それを上手にしやすらいな
(こしらえますよ)」という。

 婿は家へ帰って、また、こしらえてもらおうと思うて、
 「だんご・だんご・だんご・だんご」といいながら帰って行った。

 途中でトビト(溝などの飛びこすようにできた所)をひょっこりと飛んだ拍子に、

 「だんご」がひっこんで、「ひょっこり」になった。

 「ひょっこり・ひょっこり・ひょっこり・ひょっこり」といいながら、

 家について、嫁に、
 「おい、ひょっこりをこしらえい」

 「ひょっこりって何だすいな」
 「何て、ひょっこりじゃがい。まるうてうまいもんじゃ。お前、上手にするはずじゃが」

 「しゃてて、私、知りまへんがな」

 「おどれ、うそぬかす。ひょっこり知らんちゅうことがあるもんか」といいながら、婿は棒で嫁の頭を叩いた。

 「なにしてんだすいな。だんごのような瘤が出ましたがな」

 「おお、かかあ、そのだんごぃやい」と婿がいうた。

注1:「しゃてて」は”そうかて(そうかというて)”という意味です。
注2:「してんだすいな」は”するんかいな”という意味です。
挿絵:立巳理恵
出展:『相生市史』第四巻